サカモトハルキのブログ

北海道で5棟74室+月極P24台の大家やってます。2010年12月より法人化(10期目に突入!)。奥さんと中2小5男子と猫と自由にのんびり暮らしてま〜す!

映画『そこのみにて光輝く』を観て思ったこと

 

そこのみにて光輝く

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そこのみにて光輝く 豪華版Blu-ray

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『海炭市叙景』『オーバー・フェンス』などで知られる函館市出身の伝説的な小説家・佐藤泰志の同名小説の映画化。

函館を舞台に、心に傷を負った男がバラックのようなところで生活する女と出会い、愛を育んでゆく様を描く。

 

主演の二人は綾野剛と池脇千鶴が演じた。

池脇千鶴の弟を演じた菅田将暉は本作の演技が注目され、のちにアカデミー賞を受賞するまでの大役者に成長してゆく。

 

監督は『きみはいい子』などで知られる呉美保。

 

仕事をクビになり、パチンコをやったり飲み歩いたりしながらやさぐれた生活を送っていた達夫(綾野剛)と、家族を養うために昼間は水産加工工場で働き、夜はバーで男に体を売って働くちなつ(池脇千鶴)。

 

まさに『底(底辺)』にいる二人が出会い、恋に落ちる。

二人は共に貧しさと心の傷を抱え、どこにも行けないどん詰まりの中でなんとか必死に生きようとしていた。

 

その二人の不器用ながら健気な姿が涙を誘う。

それでも現実はトコトンまで二人を追い詰めてゆく。

 

特にちなつを都合よく手なずけ、不倫関係を続けようとする水産加工会社の2代目御曹司の存在が二人の対比として描かれる。

彼は金もあり、地位もあり、地元の名士としての名誉もある。

素敵な家に住み、家には素敵な奥さんや子供たちもいる。

 

それなのに彼は「まだ足りない」と言わんばかりに、ちなつを手放そうとしない。

挙げ句の果てに、ちなつが自分の元から離れようとするのを暴力を使ってまで阻止しようとする最低の人間なのだ。

 

この男が最低ぶりを見ていると、たとえ貧しく、地位も名誉もない二人ではあるけれど、達夫とちなつの方がはるかに美しく、まともであるように見えてくる。

いや、見えるだけではない。

実際に二人はとても美しく、まともなのだ。

 

達夫は山に関係する仕事に就いていた。

ちなつは海のそばのバラックで生活している。

 

二人を「海の神」と「山の神」に例えることができる。

そしてちなつの弟は物語をひっかきまわすトリックスター的な存在だ。

 

そう、スサノオだ!

 

僕はこの映画にどこか神話めいたものを感じた。

だからラストに二人が海の中で抱き合うシーンがあんなに神秘的なのだ。

 

恋愛において経済的な問題や地位や名誉といったものはいったいどれくらい影響するだろう。

おそらく現実的な話としては、「お金はあった方がいい」「地位や名誉もあるに越したことはない」という話になるだろう。

 

誰も好き好んで、苦しい生活になるのが目に見えている無職の男と一緒になろうとはしないかもしれない。

しかし、この映画はそういった俗世間の価値観にまで疑問を投げかける。

 

本当にそれでいいのか?

恋や愛は本当にそういう価値基準で選んでしまっていいのだろうか?

と。

 

廃れゆく地方都市では本当にこの映画で描かれてることが起きている。

貧困もある。這い上がりたくても這い上がれない若者たちもいる。

 

そしてそういう底辺にいる人たちを都合よく利用しようとするサイテーの地元のクソ2代目御曹司もいるのだ。

 

本当にリアルだ。

どん底でも必死に支え合い、希望を発見していこうとする二人が泣ける。

 

どこか神話っぽい美しさがある。

海の神と、山の神との出会いだ。

 

「底のみ」だけが「光り輝く」のだ。

最後は希望で終わったと僕は思っている。 

 

寂れゆく地方都市。

どん詰まりの生活。

佐藤泰志はいつもそんなどこにも行き場のない若者たちを描いてきた。

 

でも、そんな底辺に生きる人間たちだからこそ、到達できる場所がある。

見える世界がある。

 

海の幸と山の幸との「幸福な結び」。

あのエンディングはそのことを表現しているように僕には思えた。

 

菅田将暉 の演技も素晴らしい!