サカモトハルキのブログ

北海道で5棟74室+月極P24台の大家やってます。2010年12月より法人化(10期目に突入!)。奥さんと中2小5男子と猫と自由にのんびり暮らしてま〜す!

映画『羊の木』を観て思ったこと

 

羊の木(Blu-ray豪華版)(Blu-ray+2DVD)

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あの『桐島、部活やめるってよ』や『紙の月』などでおなじみの吉田大八監督作品。

今や日本で最も重要な映画監督の一人と言ってもいい吉田監督だけに、期待度100%で観たよ。

 

見終わった感想は、「さすが吉田大八監督!」といった感じの実に深い深い映画だった。

 いつものことながら登場人物たちはどれも一筋縄ではいかない癖のある人物ばかり。

そしてその癖のあるキャラを描く視点も決して一方向からは描いていない。

 

単なる(そして、よくある)『元受刑者たちの立ち直り物語』に終わらせないところはサスガと言わざるを得なかったよ。

 

どの役者の演技も素晴らしいのだが、僕は個人的には錦戸亮の普通の若手地方公務員ぶりが特に素晴らしいと思った。

こういう地方公務員、本当にいるわ。笑 

「普通の人の役」を演じることはきっととても難しかったはずだ。

 

日本映画には『誰が犯人か?』といったようなサスペンス映画がたくさんある。

『羊の木』もそういった要素はもちろん含まれているのだが、そこは吉田大八監督。

よくあるお決まりのパターンの映画をつくるはずがないよね!

 

また、元犯罪者や元受刑者を描いた映画も日本映画には結構ある。

だけど、そのパターンも踏襲していないんだ。

 

さらにこういった社会派サスペンスものによくありがちなドラマ性や、登場人物たちの心の叫び系も極力排除している。

 

その演出がかえって(松田龍平を筆頭に)「本当のところは何を考えてるかわからない」という緊迫感を観客に与えてくれる。

映画は淡々と進んでゆくんだ。

 

こういったタイプのは映画でよくありがちな雄叫びのシーンなんかもまったくない。

泣き叫んだり、感情を外に出して大声を張り上げたりすればいい映画ってわけじゃないよね。

 

この映画の最大のポイントは何と言ってもどこかユーモラスで、それでいて不気味な『のろろ』という地元のお祭り。

白装束でたいまつをかざして街を練り歩く姿は明らかにアメリカのあの集団のメタファーだよね。

 

あの集団に属している人たちも本人たちはいたって真剣なんだ。

真剣に正義を振りかざしているんだ。

でも真剣さがどこか滑稽で、どこか不気味でもある・・・

 

そして、言うまでもないことだけど、その真剣さとか真面目さといったようなものがやがてとんでもない悲劇を生み出し、狂気の領域へと突入してゆく・・・

 

この構造ってオウム真理教もそうだったよね。

オウムってどこかマンガチックで、どこか滑稽だった。

それだけに非常に不気味でもあった・・・

 

この『のろろ』というお祭りはそういったものを表徴しているんじゃないかと思った。

 

さらに、この『のろろ』というお祭りやそこで祀られる神様はその人間の心の闇の部分を象徴しているのかもしれないとも思った。

善と悪は表裏一体というわけなんだ。 

 

このお祭りの練り歩きの最中に北村一輝は「こんなくだらねぇもん、やってられっか!」といった具合に列からはみ出し、みんなと違う方向に向かって歩き始める。 

僕、そういう感覚って今、すごく大事にすべき感覚だと思っている。

 

みんなが一方向へ向かっていこうとしているとき、常に冷静な頭で状況を判断し、その場の空気に流されないこと。

多くの人はみんなと同じ行動を取りたがるけど、そこから抜け出してアウトサイダーになることって大事なことだよね。

 

太平洋戦争に突っ込んで行ったとき、あるいはバブル経済に浮かれていたとき、etc・・・

ある一方向に向かってみんなで突き進もうとするとき、日本人はまわりが見えなくなってしまうことがあるからね。

 

その『全体主義』や『集団心理』の結果、とんでもない悲劇を引き起こし、集団で狂気の領域に足を踏み入れてしまうんだ。

それはまさにアメリカの KKK や、オウム真理教などで繰り返されてきた集団心理の恐ろしさだよ。

 

そういった全体主義に反旗を翻し、みんなとは違う方向に歩き始めようとするセンスはとても大事なことだよね。

そして今の時代、そういうセンスを持ってる人って求められているような気がする。

 

日本は人口減少社会に突入しているよね。

この映画の舞台の街も過疎に苦しんでいるという設定になってる。

 

人口減少を食い止めるためには、移民を受け入れるかどうするかという問題を考えなければならないよね。

この映画は明らかにそういったものも描いているよね。

 

さて、「これまでとは違うもの」や「異質なもの」が僕たちの日常に放り込まれたとき、僕たちはどうするだろうか?

それを受け入れるだろうか。

それともトランプのように、それを排斥する方向へ舵を切るだろうか。

 

もしかしたらこの映画全体が現代社会のメタファーなのかもしれないな。

 

昔からそうしてるから

みんながそうしてるから

守らないといけない・・・

 

 

僕はこの映画の中で最も印象に残ったセリフだよ。

こういった感覚は日本人特有のものだよね。

 

日本人は特に全体主義に傾倒していく傾向がある。

それは日本人の美徳かもしれないが、ある意味においてはとても恐ろしいことでもあるよね。

 

例えば『勤勉さ』というのは、日本人の共通的アイデンティティになってるよね。

でもその勤勉さや真面目さをあまりにも重視しすぎるがために、『正解以外は全部バツ』といったような極端な考えに傾倒してる人って結構いるような気がする。

 

その辺が日本の今のこの閉塞感みたいなものを生み出している原因のひとつだと僕は思ってる。 

日本人には自分たちのルールから外れた異質なものをシャットアウトしようとする傾向があるよね。 

 

「みんなが正しいと言っているものが本当に正しいのか??」という問いかけ。

これは吉田大八作品に共通するテーマだよね!

 

そういえばこの映画の中で錦戸亮と木村文乃が結成したバンド、マイ・ブラみたいな音楽を演ってて「めちゃくちゃセンスのいいな!」って思った。

だいたい日本映画に出てくるバンドの音楽はダサいものが多いんだけど、この映画は違っていた。

ちゃんとカッコよかった!